東京都

REPORT

イベントレポート

2022年度 第12回

2023.02.17 開催

オープンイノベーションで加速する、暮らしと仕事のDX・自動化

※トークイベント付き

〜暮らしや仕事のDX、自動化を実現するためのニーズを持つ企業の担当者が、スタートアップとの協業を呼びかける〜

Innovation Base Tokyoピッチ&マッチングイベント第12回の模様をレポートします。暮らしや仕事のDX、自動化の実現に向けたニーズを持つ企業が登壇。人材不足等による現場の自動化ソリューションやサプライチェーンを支える革新的システム、地域を支えるプラットフォームサービスの構築等をご紹介し、スタートアップとの協業について語りました。

また、ピッチに先がけて「オープンイノベーション支援のトップランナーが語る!スタートアップにとっての企業連携活用の秘訣」をテーマとしたトークイベントを開催。Creww株式会社の取締役COO・水野智之氏と、フォースタートアップス株式会社アクセラレーションの本部マネージャー・小田健博氏をお招きし、オープンイノベーション支援の経験から感じられた、スタートアップにとっての企業連携活用の秘訣について語っていただきました。

トークイベント

登壇者プロフィール

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水野 智之氏

Creww株式会社 取締役 COO

2013年にCrewwに入社。企業・自治体とスタートアップによるオープンイノベーションプログラムの営業責任者・事業責任者を経て、現在は取締役COOとしてオープンイノベーション事業、スタートアップスタジオ(インキュベーション)事業、スタートアップ支援事業の統括責任者を務める。

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小田 健博氏

フォースタートアップス株式会社 アクセラレーション本部 パブリックアフェアーズグループ マネージャー

日本や上海での広告代理店や映画会社のアカウントプランナーを経て2016年Crewwに参画。アクセラレータープログラムのディレクター、コワーキングスペースの事業責任者としてシード期を中心としたスタートアップのメンタリングなどスタートアップ支援を行う。2021年より現職。愛知県、広島県、浜松市、京都市などのスタートアップ支援、エコシステムビルディングに携わる。

トークイベントの要旨

・ 失敗事例から考える、大企業との協業を成功させる方法
・ スタートアップ企業が大企業と協業をすることの意義
・ 「Innovation Base Tokyo」の効率的な活用方法とは

失敗事例から考える、大企業との協業を成功させる方法

イベントのイメージ

6,500以上のスタートアップ企業が登録している国内最大級のプラットフォーム『Creww』で、これまで多くのスタートアップ企業と大手企業の協業をサポートしてきた水野智之氏と小田健博氏。
2人は企業や大学、行政とスタートアップ企業の協業において、うまくいかないパターンにはいくつか共通点があるといいます。

オープンイノベーション事業の統括責任者も務める水野氏は、大手企業とスタートアップ企業が互いの目的を理解し合うことが重要であると述べました。
スタートアップ企業が大手企業に対して事業成長や資金調達などを求める一方で、大手企業がスタートアップ企業に対して目的を十分に伝えられてない場合があるとコメント。「大手企業は自社の事業やサービスの内容を伝えるだけでなく、そのサービスが企業にとってどのような意味を持ち、どのような役割を果たすのかというストーリーを考え、伝えることが大切。そうすることで、お互いの目的が明確になり、win-winの関係へと繋がる提案が生まれる」と述べました。また、サービスの理解や目的が明確でないまま進むと、うまくいかないことが多いとも指摘しました。

一方、小田氏はオープンイノベーションの魅力を「1社ではできないことを数社でやること」と語りました。その上で、全く違う業界・業種で、違う言葉を利用して事業をしていることを踏まえて、丁寧にコミュニケーションを行うことが大切であると説明しました。

スタートアップ企業が大手企業と協業をすることの意義

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続いて、スタートアップ企業が大手企業と協業をすることの意義を問われると、水野氏は「日本の企業においては」という前置きをした上で、「スタートアップ企業は前例のないことに挑戦していくものですが、大手企業であればあるほど、スタートアップ企業に実績を求めます。ですが、事業の成長という観点では、実績の有無は本質ではない。実績が無くても良い事業は伸びるし、実績があっても良くないサービスは終了してしまう」と冷静に分析しました。

小田氏は「必ずしも協業がいいことだとは言わないようにしています」と断言。「スタートアップ企業が成長していくための要素の一つに”大手企業との協業”があるだけ。なぜ、今、大手企業と協業をする必要があるのかを考えることが重要」とアドバイスしました。

「Innovation Base Tokyo」の効率的な活用方法とは

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さらに、「Innovation Base Tokyo」をはじめとするコンテンツを、スタートアップ企業はどのように活用していけばいいのかとの質問に回答しました。

水野氏は「情報が溢れている現代ですが、とりあえず『Innovation Base Tokyo』を見れば、大手企業がどんなことをスタートアップ企業に求めているかをすぐに知れることは大きなメリット」とコメント。また、数が質を生むことという視点を持ち、スタートアップ企業も大手企業も、いろいろなチャレンジをして自分たちに合うやり方を見つけ、質を高めていくことが次のステップにつながると話しました。

小田氏は「情報は集めようと思えば集まるけど、その時間がもったいない。『Innovation Base Tokyo』は協業したいという意思を持つ企業が集まっているので、出会ってからアクションを起こすまでのスピードと確度が高いのが魅力。時間を無駄にすることなく自分たちが出会うべき人と出会える仕組みになっている」と答えました。

協業は簡単ではない。だからこそ失敗を次に繋げていくことが重要。

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最後にスタートアップ企業へメッセージを聞かれると、水野氏は「事業成長のためにはやるしかないと思っていますが、協業が一過性で終わらないように、どうすれば継続できるのかという観点を持って取り組んでほしいと思っています。そういう意味では、『Innovation Base Tokyo』は継続的にいろんなチャレンジができるプラットフォームだと思うので、みなさんにも積極的に使っていただきたい」とコメント。

小田氏は「協業を成功させるのは簡単なことではないので、たくさん失敗していい。失敗を失敗として終わらせるのではなく、失敗をしても『次もう一度やってみよう』という前向きな考え方と体制を持つことが重要。そうすれば日本全体がイノベーションされていく」と熱い思いを語りました。(了)

ピッチ&マッチングイベント

協業スタートアップ募集中の6つの組織が、シーズやニーズのプレゼンテーションを行いました。

【登壇企業リスト】

  • 株式会社キトー様
  • 株式会社テプコシステムズ様
  • 南海電気鉄道株式会社様
  • 日本海ガス絆ホールディングス株式会社様
  • 株式会社長谷工コーポレーション様
  • 株式会社FUJI様

株式会社キトー様

「重力からの解放」をキーワードに協業テーマを募集します!

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巻上機やクレーンといったマテリアル・ハンドリング機器の製造・販売を行う株式会社キトー様。重量が大きいものを移動させるといった普遍的な課題解決に貢献する一方で、フィジカルかつアナログな取り組みがメインであることが課題だと説明。スタートアップ企業との共創によって、デジタルの力を用いた新サービスの提供を目指したいと語りました。活用可能なアセットは、世界中の大手企業を顧客に持っていること、日本と北米での高いマーケットシェア率、物流業界のみならず風力発電所やエンターテイメント業など多岐に渡る顧客層、設計から生産まで一貫して行える製造力などを挙げました。協業例はロボット時代における新しいモノの移動法、工場のデジタルツイン、稼働モニタリングなどを紹介しました。

株式会社テプコシステムズ様

脱炭素社会を目指した「街づくり」を共に推進できるパートナー募集

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東京電力グループの情報システム子会社である株式会社テプコシステムズ様は、東京電力グループが持つ大きなバリューチェーンをDXで支えることが使命だと説明。なかでも長期的な安定供給とカーボンニュートラルの両立が大きな目標であり、そのためにはデータの活用とUXの活動ならびに、DXプラットフォームの形成が不可欠だと語りました。スタートアップ企業との共創では、カーボンニュートラルの実現を支えるアイディアと防災・まちづくりをITで支えるアイディアを募集。社会貢献と安心安全なくらしといった普遍的なテーマを超えて、楽しいくらし・育てる・遊ぶといった視点を取り入れてほしいと語りました。使用可能なアセットとして、電力領域で培った技術をもとにした設備などの監視・制御システム、エンジニアリング技術、データ連携プラットフォームなどを挙げました。

南海電気鉄道株式会社様

南海電鉄のDX戦略〜1つのIDで最も心地の良い日常生活を実現する〜

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鉄道とバスの運輸業のほか、レジャー・サービス業、不動産業などを行う南海電気鉄道株式会社様。現存する日本最古の民間鉄道会社として人々を送り届けてきた実績を、デジタル技術と掛け合わせて、南海電気鉄道沿線にお住まいの方の生活幸福度向上を目指すとともに、地域産業活性化につなげたいと説明。そのために、自社サービスの「NANKAI地域サポート・ポータル(仮称)」を活用したサービスをスタートアップ企業とともに展開していきたいと語りました。共創テーマは、お客さまの生活を支えるもの、子供の発育を促すもの、地域の物流網に関するもの、駅や路線を拠点にした新サービスなど、大阪府の堺市・泉北郡エリア在住の子育て世代をターゲットにしたアイディアを募集しました。

日本海ガス絆ホールディングス株式会社様

エネルギー業界における顧客接点のDXを共に実現するスタートアップを募集します!

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ガスの供給・販売を中心に、飲食事業や建築設計事業を担う子会社を持つ日本海ガス絆ホールディングス株式会社様。売上の半数以上をガス事業に頼っている現状から脱するためには、既存事業の延長線上にない事業領域への進出と、既存事業経営の効率化が不可欠だと説明。労働者人口の減少や社会の脱炭素化、マーケットの縮小などの課題を解決し、顧客接点や働き方のデジタル化に関するアイディアを募集。共創テーマは、新規・潜在顧客へのアプローチ、既存顧客のエンゲージメント向上、新たな顧客接点プラットフォーム「Prego Club(プレーゴクラブ)」の構築の3つ。キーワードに、オムニチャネル、チャネル非接触化、CX向上などを挙げました。

株式会社長谷工コーポレーション様

主に集合住宅における建設資材の搬送〜建物維持管理までのダイナミックな革新による情報利活用、省人化、GX推進を目指す。

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建築事業や不動産事業、マンション管理事業などを行う株式会社長谷工コーポレーション様は、生産技術力の向上と新たなサービス提供を目標に、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)やDXを導入してきました。これによって工事期間の短縮、労務削減、省人化、原価削減、次世代型のマンション管理などに取り組んできたと説明。さらなる推進を目指すために2つの共創テーマを掲げました。一つめはドライバー不足のリスク軽減やCO2削減などを目的とした、建設サプライチェーンの先進的なロジスティクス管理。二つめは建物の維持・修繕における管理システムの刷新と建物点検などにおける情報記録手法の変革について。時代が求める安心安全な住まいづくりをともに目指す企業を募りました。

株式会社FUJI様

〜マシンテンディングの自動化に向けて〜

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電子部品の表面実装ロボットの製造をメイン事業とする株式会社FUJI様は、日本のものづくりを支える現場に着目。なかでも金属加工業の現場は人手不足に加え、就業者の高齢化や生産性の低下など多くの課題を持つ現場だと説明しました。そこで加工機に部品や材料を載せたり降ろしたりする「マシンテンディング」と呼ばれる作業の自動化を目指したいと語りました。共創テーマは、画像処理データの作成を不要とするハンドアイ式のVisionシステムと汎用ピックが可能なハンドの二つ。ともに現場の負担を軽減するため、ユーザーがロボットのセットアップを即日でできるようなシンプルなモジュール開発を期待しました。またスタートアップ企業とやりとりを行うイノベーション推進部は役員直轄部門のため意思決定がクイックであることも強みだと説明しました。

【イベント概要】

テーマ
オープンイノベーションで加速する、暮らしと仕事のDX・自動化

開催日時
2023年2月17日(金)13:00〜16:30

イベントパート開催場所
オンライン(YouTubeライブ配信)

本イベントはInnovation Base TokyoのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信中です。
こちらでご覧ください。

※協業募集期間が終了している場合がございますので、ご容赦ください。