【第11回|3月1日】ヒトモノの移動の未来形・イベントレポート【※トークイベント付き】
〜エネルギー・インフラ関連企業が自社のシーズやニーズを語る〜
企業や大学、行政などが抱えるシーズやニーズをスタートアップに向けてプレゼンテーションし、協業や連携を模索する「Innovation Base Tokyo」のピッチ&マッチングイベントです。今回は梅津 優氏(ファブレスメーカー CSO兼CMO)と水野 敬亮氏(一般社団法人 未来創造 代表理事)が『自動車産業とモビリティの未来』をテーマとしたトークイベントを開催。また、エネルギーやインフラ関連の商品やサービスを提供する企業が自社のシーズやニーズについて語りました。
トークイベント
登壇者プロフィール
現在はファブレスメーカーのCSO兼CMOとして、海外Tech系スタートアップと年1社ペースで5年連続提携、プライベートでもコンサルティングやメンター等を手掛け事業化へ導く。その前はエンジニアリング会社でオープンイノベーションを通じて新事業を推進。商社勤務も長くモビリティ領域では、カーエレクトロニクスに始まり、CASEやMaaS分野での実証実験や新規参入プレイヤーとの事業展開も。海外との国際取引に伴う輸出入にも精通。
90年代北米で、インターネット創世記のビジネスを学び、ビジネスカレッジ時代に3度の起業を経験。米ITギガベンチャーにてマーケティングや新規事業モデルの市場実験を推進。帰国後は自動車部品メーカーにて、情報通信/IT事業企画としてクルマのデジタル化推進に従事し、新規事業創造を行っている。 現在は“個人のアイデア・情熱を実現するエコシステム”をつくるべく、名古屋を拠点に2016年より東海圏最大の有志団体「未来創造」を設立(2018年より一般社団化)。 未来創造自体を重力場として、界隈のイノベーターやビジネスクリエイターのネットワーキングハブになり、オープンイノベーションに関わる取組みを数多く開催。最近では特に、スタートアップの土壌づくりと、広域社会連携を中心に力をいれており、ベンチャーへのメンタリングを数多く実施し、地域と地域を繋ぐために日本各地を奔走している。
トークイベントの要旨
・ 自動車産業の急速な変化 ・ 人の生活が中心となるネットワーク社会と移動 ・ 新たなモビリティの登場と移動距離の概念
自動車産業の変化と未来像
『自動車産業とモビリティの未来』をテーマとしたトークイベントでは、モビリティの世界が現在どうなっているのか、どんな未来が待っているのかを梅津・水野両氏が語りました。まず梅津氏は電気自動車の未来像について、今後はプラットフォームとして提供されるモーターインバーターバッテリーを用いて、いかにデザインしていくかという車のプラットフォーム化が進んでいくと説明しました。 水野氏はモノづくりからソフトウェア体験型への変化や、自動車産業の高品質・高燃費からライドシェア・自動運転・EV化への変化など、急激な時代の転換が世界中で起こっていると語り、シャオミやソニーなどによる自動車分野への参入によって産業の壁がどんどん破られていることで自動車産業が一気に変わってきていると指摘しました。
車がスマホ化・インフラ化する可能性
自動車による移動は、“乗って移動する”から、目的地に到達するために車の中でソフトウェアを経由したサービスを受ける体験型へ推移すると水野氏は語り、既存産業では車が中心であった構造が、IT産業の視点ではスマホと車のソフトウェアアプリケーションによって、人の生活が中心となるネットワーク社会が実現すると言います。 車の電動化・ソフトウェア化・自動化という観点で梅津氏は、ドライバーが前方へ注意を払う必要がなくなることで、車の中がエンターテインメント空間と位置づけることが考えられ、さまざまなソフトウェアサービスが成立すると話し、自動運転はインフラになるとした上でその未来像をこう説明しました。
もう自分で車を持つ必要がなくなるわけですよね。インフラとなって行きたいところへ行く。玄関を開けると車が待っていて、目的地に着くと車がどこかへ行ってしまう。そういう世界が近い将来確実に来ると思います。
さらに水野氏は自動運転の文脈からテスラ社について解説。テスラは世界で初めてハードとソフトの垂直統合をなし得た企業であると紹介。これまで自動車業界ではハードの車を生産してオプションとしてソフトを用意するかたちであったが、テスラの考え方は自動車を介したアプリケーションや世界観を売る領域へ初めて踏み出したと語りました。
新たなモビリティの登場とロボティクス分野の融合
新しいモビリティの紹介として空飛ぶ車の話題も。トヨタやANAがサービス提供に向けて取り組んでいることでもうすぐに目の前の世界に広がっていると水野氏は言います。1,000キロを2時間未満で移動するループ型トレインの紹介も踏まえて、中距離・長距離の移動に対する概念がどんどん変わり、さらにキックボードを代表としたマイクロモビリティも続々と登場。ラストワンマイルという切り口が世の中に浸透していると梅津氏は語りました。 モビリティとロボティクス分野の融合にも話が及びました。働くロボットの登場により、配送・物流領域から人が離れ、短距離輸送はモビリティロボットが行うことも十分に予測できるとのことです。
最後に梅津氏は、オープンイノベーションを成功させるには従来の考え方を変えて、いかに早く巧遅拙速的にやってみることがポイントであると語り、水野氏はスタートアップ側はユーザーに近いサービスを小さくでもいいからやり、大手企業はその小さなサービスを大きなプラットフォームにするための発想をきちんと抱いて取り組むべきだと述べました。
ピッチ&マッチングイベント
さまざまな分野の企業が自社のシーズやニーズについて語る逆ピッチイベントでは、5社の企業様がピッチトークを展開しました。
【登壇企業リスト】
株式会社INPEX様
THK株式会社様
東京ガス株式会社様
日本生命保険相互会社様
大阪ガス株式会社様
株式会社INPEX様
クリーンでサステナブルなエネルギーを皆様に
帝国石油と国際石油開発が統合した株式会社INPEX様は昨年の名称変更とともに、社会のニーズに答えたソリューションを構築すべく、水素エネルギーの展開や再生エネルギーの強化を含む5つの事業の柱にチャレンジしていると語り、その事業内容について説明がありました。 水深2,000mの大水深での掘削技術やカーボネガティブを可能とするCCS技術、老朽油ガス田の所有などを得意領域として挙げた同社では、EX(EnergyTransformation)のパイオニアとして多様でクリーンなエネルギーを安供給すると説明。カーボンニュートラルエネルギーの産業イメージの中で同社はインフラ事業など上流部門に特化した会社であるがゆえ、顧客側などの下流部門において協業を求めていると話しました。
THK株式会社様
製造業向けIoTサービスOMNI edge
工作機械や産業用ロボットに使われ、現在では国内外で多くのシェアを誇るリニアモーションガイドなどを製造するTHK株式会社様。部品ビジネスの経験を活かした研究開発に取り組んだ結果、部品にセンサを搭載することで故障などの予兆を検知する『製造業向けIoTサービスOMNI edge』サービスを開始したと説明しました。センサからネットワーク環境までをワンストップで提供し、簡単・安全・リズーズナブルを目指したという同社のサービスは自動車業界・食品業界を中心に導入され、各業界での設備総合効率の最大化に貢献していると話しました。プレゼンテーションではサービスの将来像を紹介するとともに、さまざまな企業との協業によってサービスが成立していると話し、さらなるビジネススケールを目指してパートナーを探していると語りました。
東京ガス株式会社様
飲食店支援サービス「よりみちパスポート」〜コラボレーション求む!!〜
東京ガス株式会社様が取り組むのは、飲食店に対する支援サービス『よりみちパスポート』です。同社が大事にしてきた「お客様のため精神」を背景に、2021年12月にスタートした同サービスは、新型コロナウイルスの影響により厳しい状況を強いられる飲食店の集客サポートと、顧客が安心して飲食を楽しむきっかけづくりを目的として立ち上げたと説明しました。そしてサービスを運営する中でいくつかの課題が出てきたことで、スタートアップ企業との協業によりその課題を解決し、世の中になくてはならないサービスへと育てていきたいと語りました。課題点として加盟店・顧客獲得のためのPR支援、社会課題解決の進め方に関する支援、そしてアフターコロナを見据えた飲食店支援を挙げ、協業を呼びかけました。
日本生命保険相互会社様
お客様と社会にとって、「今日」よりもっといい「未来」を協業パートナー企業様とつくる。
「晴れた日に傘を売る」といわれる保険ビジネスにおいて、今はこの世にないけれど、これから必要とされる新しい事業を一緒に作りましょうと呼びかける日本生命保険相互会社様は、2018年に日本生命グループのオープンイノベーション拠点『Nippon Life X』を開設。調査・投資・事業開発を中心に協業パートナーとともにお客様の100年人生を支えるソリューションサービスの創出を目指すと話しました。 デジタル化を筆頭にさまざまな社会環境の変化が起こっている現代において、同社の既存事業にどのような影響や発展、進化が考えられるのかを予測したプレゼンテーションでは、デジタライゼーションやデジタルによる新しい保険ビジネスなどを挙げ、ノウハウのない領域におけるパートナー企業との協創を積極的に推進したいと語りました。
大阪ガス株式会社様
オープンイノベーション活動とSDGs
2009年からオープンイノベーション活動を実施している大阪ガス株式会社様は、大阪ガス単体のニッチなニーズから、社会全体の課題解決の一翼を担う存在を目指すと語り、今回のプレゼンテーションでは同社が取り組むSDGsにおいて、環境に優しい生分解性樹脂の新しい使い方や、生物の成長を促進させるマイクロバブルの新規用途開発、ガス警報器でユーザーの声を発話させるための音声加工技術、電気・ガス契約と連携して提案する新しいサービス開発という4つのニーズを紹介しました。また、同社はスタートアップとの協業を積極的に行っているとし、2021年は70件のニーズに対し172社から提案を受け、14社と協業が始まっていると話しました。
【イベント概要】
テーマ ヒトモノの移動の未来形
開催日時 2021年3月1日(火)13:00〜16:00
イベントパート開催場所 オンライン(YouTubeライブ配信)
本イベントはInnovation Base TokyoのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信中です。 こちらでご覧ください。
VIDEO
※協業募集期間が終了している場合がございますので、ご容赦ください。