【第6回|12月15日】スタートアップと一緒に見つけたい地域の将来・イベントレポート【※トークイベント付き】
〜各自治体の産業振興・創業支援等の担当者が各地域の抱える社会課題等について語る〜
企業や大学、行政などが抱えるシーズやニーズをスタートアップに向けてプレゼンテーションし、協業や連携を模索する『Innovation Base Tokyo』のピッチ&マッチングイベント。第6回目となる今回は、各自治体の産業振興・創業支援等の担当者が各地域の抱える社会課題等について語りました。 トークイベントでは『つながることで価値が生まれる~アフターコロナ時代の経営の在り方~』と題して、新田信行氏(開智国際大学客員教授、株式会社eumo最高顧問)が自助だけでなく「新たな共助、公助」を含め、すべてをつなぎ合わせていく経営者の力を語ります。
トークイベント
登壇者プロフィール
新田 信行
開智国際大学客員教授、株式会社eumo最高顧問
1956年生まれ、千葉県出身。1981年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ与信企画部長を経て、2011年にみずほ銀行常務執行役員。2013年から2020年まで第一勧業信用組合理事長、会長。
トークイベントの要旨
・ 多様性の時代におけるマーケットの捉え方 ・ 企業としての強さが生まれる源泉は“つながり” ・ 従業員エンゲージメントと働くことの意義
均一性の時代から、多様性の時代
コロナ禍によって実体経済を直撃した需要・供給ショックにより、ヒトとモノの動きが止まってしまったことは、社会や企業にとって大きな打撃だと新田氏は語りました。時間軸がコロナをきっかけに急回転し、経営環境が大きく変化しているという新田氏は、高度成長期時代からそのあとの失われた30年という中で進んでいた変化が一気に顕在化したと指摘。ヒトが増え、モノとカネが足りない時代から、ヒトが減り、モノとカネが余る時代の中で、たとえば1,000億円に対してシェアを取りにいくよりも、1億円のマーケットが1,000種類あると考えた方がマーケットが捉えやすい『均一性の時代から多様性の時代』に変化していると語りました。
企業の強さを生む源は“つながり”
厳しい経営環境の中で『本物がわかる時代』になっていると新田氏は言います。変化という強風の中で根無し草のように吹き飛ばされるか、しっかり根を張りしなやかに対応できる強さを持っているのかが、顕著にわかってしまう時代であると語り、何のために自分たちは存在するのかをしっかりと踏まえた会社にこそ、本物の強さがあると語りました。 企業としての強さが生まれる源泉とは何なのか。新田氏はさまざまな考え方があるとした上で『絆やつながり』を挙げます。政治・経済・社会それぞれのつながりや人と企業、地域のコミュニケーションがあることで価値を生み、価値創造の土壌を豊かにすると述べました。
生産性の向上は、会社と従業員がワクワクを共有すること
企業・地域・顧客それぞれのつながりの大前提には、会社と従業員の絆=従業員エンゲージメントがあると新田氏は語りました。それは単に働き方改革における制度の見直しなどではなく、そもそもの『働くこと』の意義にあるといいます。従業員と会社がお互いに影響し合い、そして共に必要な存在として、絆を深めながら成長していくような関係が、社員の想像力を引き出して生産性を高めるとし、自分たちが社会にどんな素晴らしい価値を提供するのかという仕事を通じたワクワクを共有することで、人の生産性が高まるとのことでした。 環境の激変は社会ニーズの激変だという新田氏は、多くのブルーオーシャンが生まれているチャンスの時代の中で、新しい流れを共に作っていくことができれば風向きは変わると語りました。
ピッチ&マッチングイベント
さまざまな分野の企業が自社のシーズやニーズについて語る逆ピッチイベントでは、6つの自治体がピッチトークを展開しました。
【登壇自治体リスト】
仙台市
スタートアップとともに街を実験場に。ソーシャルイノベーションを仙台から
東北の県域を超えた連携や、スタートアップ企業の発想によって社会課題を解決し、サステナブルなビジネスを東北から生み出すことを目指す仙台市。街を実験場にしたいと考える同市は、スタートアップが提案するサービスやプロダクトのアイデアをユーザーマーケットでスムーズに実証実験まで行えるように、スタートアップと地域をつなぐ役割を担うと語りました。 具体的な事例として、先端技術を活用した人口減少・高齢化地域の課題解決に向けた実証実験や、防災・減災に貢献したいという意欲を持った企業との実証プログラムが紹介されました。仙台市や東北の取り組みを通じて、課題解決のタスキがなめらかにつながる社会を作っていきたいと述べました。
浜松市
浜松バレーの実現に向けて
グローバル企業を多く輩出するモノづくりの街・浜松市。昨今の廃業率が開業率を上回る状況を打破するための施策『浜松バレー構想』に取り組んでいると語りました。浜松バレー構想は、モノづくり企業の技術とスタートアップのアイデアの融合によってイノベーションの連鎖を生み、輸送機器につぐ基幹産業を創出していくという目的とのこと。 また同市では、さまざまな支援メニューを用意していると述べ、日本を代表するメンター陣によって集中支援を行う起業家育成プログラムや、首都圏のVCが市内のスタートアップに投資するファンドサポート事業などを紹介。スタートアップ企業の進出を積極的に受け入れ『スタートアップの街』として新たなる盛り上がりを生み出したいと語りました。
山梨県
TRY! YAMANASHI 「スタートアップ・フレンドリー」な山梨県の実証実験支援
豊かな自然のもとでの果樹栽培や、織物・和紙などの地場産業、機械電子関連の産業も多い山梨県。2017年から産学官金の協業による起業・創業支援を実施し、短期集中プログラム『Mt.Fujiイノベーションキャンプ』からは40件以上の起業家が生まれているとのこと。 リニア中央新幹線開業を見据えた『リニアやまなしビジョン』を策定し、テストベッドを突破口に最先端技術で未来を創るオープンプラットフォーム山梨という未来像を掲げる山梨県は、県内で新技術やサービスの実験をして欲しいと述べました。また、実証実験サポート事業もスタート。企業から実証プロジェクトを募集し、市町村、起業家コミュニティ、起業支援機関などを巻き込んだオール山梨の支援体制でサポートしているということです。
川崎市
川崎市の研究開発型スタートアップ支援について
製造業拠点から研究開発拠点への転換が行われる川崎市には、サイエンスパークが出来つつあり、その一例として紹介があった『King Sky Front』では、ライフサイエンスや環境分野の研究機関が集積するクラスタを形成した拠点が立ち上がっていると語りました。 川崎市が研究開発拠点『新川崎・創造のもり』内に持つインキュベーションラボの説明では、大企業からベンチャー企業まで入居可能なオープンイノベーション拠点『AIRBIC』や最新鋭の微細加工装置・分析評価装置を保有する『NANOBIC』などを取り上げ、ソフト面の支援としてワンストップ起業支援拠点による起業・事業相談、個別メンタリングを中心とした成長支援プログラムなども推進しているとのことでした。
神戸市
スタートアップと取り組む、イノベーション・エコシステムの構築
2025年には支援社数1,000社を目指すと語る神戸市は、将来的なエンジニア不足を見据え、神戸市からエンジニアが生まれやすい環境を整備するべくエンジニアの創出事業も推進しているといいます。 神戸市のスタートアップ支援事業は、プレシードからミドルまで幅広く支援する体制があるとした上で、主な支援事業としてアメリカVC500Globalと提供する起業家育成プログラムや、行政が抱えている課題を一般公開し、実証実験を行うオープンイノベーション事業、実証実験を行いたい企業からアイデアを募集するスタートアップ提案型実証実験事業のお話がありました。その他にもスタートアップと支援者のマッチングプラットフォーム、コワーキングスペース運営、県市協調による官民連携ファンドの取り組みを紹介しました。
広島県
広島県が描く、スタートアップ連携構想
2020年度に県内へオフィス移転・拡充をした企業数が31社を数えるという広島県。アクセスの良さや利便性、時代をリードする人材の育成環境、世界的な知名度による発信力を県内に拠点を置くことのメリットとして挙げ、企業誘致の助成制度も充実していることもアピール。本社機能の移転による助成制度と短期滞在型の助成制度という2本柱で運用していると説明しました。 広島県の農業分野における人材不足や遊休地の増加という課題に対して、スマート農業技術を使った課題解決を行うプロジェクト『hiroshima SeedBox』では、毎年課題を取り上げてその解決策を募集しているとし、来年度の課題のひとつであるレモンのサイズ判別の迅速化や労働力の確保を解決する技術を持ったスタートアップ企業は、ぜひ応募して欲しいと話しました。
【イベント概要】
テーマ スタートアップと一緒に見つけたい地域の将来
開催日時 2021年12月15日(水)13:00〜16:30
イベントパート開催場所 オンライン(YouTubeライブ配信)
本イベントはInnovation Base TokyoのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信中です。 こちらでご覧ください。
VIDEO
※協業募集期間が終了している場合がございますので、ご容赦ください。