東京都

REPORT

イベントレポート

【第1回|9月7日】始動!事業共創を生み出すシーズ&ニーズ逆ピッチ・イベントレポート【※トークイベント付き】

〜新規事業を創るには事業会社とスタートアップの連携がカギ!研究者、実務家と語る、連携の効果と成果〜

企業や大学、行政などが抱えるシーズやニーズをスタートアップに向けてプレゼンテーションし、協業や連携を模索する「Innovation Base Tokyo」のピッチ&マッチングイベント。
第1回目となる今回は、新規事業の種を模索する企業が自社の事業の現在や展望、自社の持つシーズやニーズについて語る『ピッチパート』と、国内外を問わず新規事業やイノベーションを企業側の立場から関わってきた傍島健友氏(Tomorrow Access, Founder & CEO)、大手企業と共同で組織形成や新規事業の創造について研究に取り組む田中聡氏(立教大学経営学部助教)が、合田ジョージ(株式会社ゼロワンブースター取締役 共同代表)を聞き手に、グローバルな知見とアカデミックな視野でイノベーションについて語る『トークイベント』の2部構成です。

トークイベント

登壇者プロフィール

プロフィール画像

傍島 健友(そばじま けんゆう)

Tomorrow Access, Founder & CEO

日本の大手通信会社KDDIで25年間、携帯電話システムの無線技術者、経営戦略、新規事業戦略、スタートアップへの投資、イノベーション活動など数々の事業経験を持つ。マイクロソフト社との事業提携、米国Facebook、Google、国内大手ゲーム会社GREE、コロプラ社などとの協業も担当、25名のメンバーを統率。スタートアップへ20社以上の投資経験があり、2015年からは米国シリコンバレーにて活動。最先端の技術からビジネスモデルまで幅広い知見を持つ。2021年4月米国シリコンバレーにて独立。

プロフィール画像

田中 聡(たなか さとし)

立教大学経営学部助教

1983年 山口県周南市生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程 修了。博士(学際情報学)。新卒で株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。2010年 株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)立ち上げに参画。同社リサーチ室長・主任研究員を務めた後、2018年より現職。専門は、経営学習論・人的資源開発論。新規事業を生み出す人と組織について研究している。

トークイベントの要旨

・ シリコンバレーにおける大手企業とベンチャー企業の協業事情
・ 日本のイノベーションに不足する3つの注目ポイント“Why,How,Who”
・ 成功する新規事業のハンドリングはどこの部門がするのか?

イノベーションを生み続けるシリコンバレーの今

イベントのイメージ

最初のトークテーマはイノベーションという文脈においては世界最高峰の場所とも言えるシリコンバレーの現状について。一時期の勢いに陰りがあるとも言われるシリコンバレーで、大企業とベンチャー企業との協業はいかにして進んでいるのでしょうか。傍島氏は、シリコンバレーに対する印象について「もともと土壌がすごく厚いので正直ビクともしてないってのが個人的な感想」と前置きした上で、シリコンバレーの実情をこう語りました。

いわゆる大企業とのスタートアップの連携はやっぱり多いですよね。肌感としては日本よりも多いんじゃないかなという印象があります。たとえば2016年頃に高速飛行機を製造するスタートアップの製品を、ユナイテッド航空が15機購入したっていう話があって。当時は正直、ユナイテッド航空がスタートアップと組むのかと思いましたが、それから5年で着々と研究や商用化が進んで、本当にスタートアップが飛行機を作って売るんだというところに面白みを感じますし、注目すべき点だと思っています。

日本のイノベーションに足りない“Why,How,Who”

イベントのイメージ

一方で日本企業がイノベーションを30年間起こせず、GDP停滞や生産性の低下を招いている本質的な問題について田中氏は、新規事業という文脈から“Why”“How”“Who”の3つに注目していると話します。

新規事業を目的化する議論というのがあまりにも多すぎるような気がしてます。会社として、未来に何を残していきたいのかという目的を果たすために、既存事業で成し得ないことを新規事業に託そうというのが本質です。これがWHY。
HOWはいわゆる合議制の意思決定の中で、なかなかイノベーションは生まれないよねとか、短期業績を求めすぎていいのかなという、方法論的な話。
そしてWHO。新規事業部門が新規事業を管轄してトップが評価するのではなく、トップが起案して、それを評価するのはお客さんでなくてはいけません。起案者と評価者の関係性が、ちょっとこじれてるんじゃないのかなというのが僕の視点から見た新規事業創出の課題ですね。

新規事業は人事部が掌握する?

イベントのイメージ

田中氏が言う3つの注目点、その中でも誰が新規事業を管轄するのかという“Who”において、うまく回っている社内起業や新規事業は経営企画ではなく、人事部がハンドリングしている場合が多いのでは?という意見に対して、傍島・田中両氏がそれぞれの専門領域から見解を述べました。
傍島氏は海外における経営戦略、事業戦略の先にある人事戦略について密接につながっているのは間違いなく、自社に足りていないヒトについて考れば、自ずと事業がわかっている人が人事戦略の旗を振って、フィットした人材を雇っていくのは自然の流れだと言います。さらに海外の人事戦略の印象についてこう語りました。

特にアメリカは流動性が激しいので、バイスプレジデント、日本でいうと事業本部長クラスの人が、採用の権限をかなり持っているところもあります。そういったところも戦略的に人を集めて事業を作っているなという印象はありますね

一方田中氏は、定量的に測れるものではないとしつつも、やはり感覚的には人事部門が干渉しているケースは多く、そういう企業は新規事業を生み出す本質的なメカニズムを察知していると言います。組織内のリソース、とりわけ人材に関するリソースをうまく調整しながら、イノベーションの実行に向けて資源を投下するのはやはり人事部門であり、新規事業のフェーズによってイニシアチブを持つ部門の変化はあれど、ことさら人事部門の存在感は強いという分析です。

トークイベントの最後に、おふたりからイノベーションに挑む日本企業に向けてメッセージをいただきました。

イベントのイメージ

傍島氏は山登り型のゴール設定から、波乗り型への変化を期待したメッセージです。

昔は山登り型でビジネスゴール設定をして、どういう順番で登っていこうかというプランを作っていましたが、現在は外部環境がものすごいスピードでどんどん変わっていくわけです。だからいまは、波乗り型だという人もいます。サーフィンは波を待って、来た波に乗るか乗らないかをその瞬間に自分で決めるんですね。そういう波=変化に対して柔軟に対応することで、新しいものが生まれるんじゃないかなと個人的に期待をしています。

イノベーションの成果を早急に求め過ぎないことが大事だという田中氏からのメッセージ。

オープンイノベーションが流行り始めたのって、ここ数年じゃないですか。なので、それがうまくいくかどうかは、この先の未来が証明する話なんですよね。現時点で評価をすること自体が早すぎるんだと思うんです。目線を落とし過ぎていくと、本当に大義として会社が何を未来に残していくのか、社会に何を価値提供していくのかっていう本質も薄れてきますから。もうちょっと待って、成果を急ぎすぎないってことが1つ大事なメッセージなんじゃないかなって思います。

イノベーションはあくまでも結果論。急いで結果を求めることなく、波を待つことの重要性をお話いただきました。

ピッチ&マッチングイベント

さまざまな分野の企業が自社のシーズやニーズについて語る逆ピッチイベント「始動!事業共創を生み出すシーズ&ニーズ逆ピッチ」では、4社の企業様がピッチトークを展開しました。

【登壇企業リスト】

  • NOK株式会社様
  • 株式会社 小学館様
  • 株式会社 小学館集英社プロダクション様

ほか、当日は味の素冷凍食品株式会社様が登壇し、シーズやニーズなどについて逆ピッチしました。
※上記については、アーカイブの予定はございません。ご容赦いただけますようお願い申し上げます。

NOK株式会社様

日本初のオイルシールメーカーが目指す、革新的技術の社会実装

イベントのイメージ

オイルシールの製造技術を基盤に、国内外で活躍する総合部品メーカーであるNOK株式会社様は、2017年よりこれまで培ってきた革新的技術を用いた新規事業を開発するプロジェクトがスタート。環境・エネルギー・情報通信・ヘルスケアの4分野で挑戦を続けています。
チャレンジの真っ最中だからこそ、スタートアップの皆さんとともにこれまでの枠組みを越えてイノベーションを起こしたいと考えるNOK株式会社様は、生体センシング領域におけるゴム電極の開発や、ファブリック状の縫える電極、水に入れると見えなくなる材料・MEXFLON(メックスフロン)などユニークな製品の開発を手掛けています。まずは使ってみたい、触ってみたいと感じた方とディスカッションから始めたいとのことです。

株式会社小学館様

出版事業をアップデート。マンガ・学習・付録の3つを刷新するイノベーションとは?

イベントのイメージ

2023年に創業100周年を迎える総合出版社・株式会社小学館様は、デジタルテクノロジーの勃興によって出版業界の転換期を迎えている今、出版事業のアップデートを行うためにはスタートアップが持つ発想力や技術力が不可欠だと語りました。
今回、小学館様からのご提案テーマは3つ。新たなマンガの表現技術や、子どもが安全に課金出来る決済技術など、マンガの無限の可能性を広げるイノベーション。紙のドリルの限界を超える、デジタル技術を駆使した新たな学習ドリルのあり方。そしてログイン不要の購入特典やデジタル付録の認証技術についてです。新しいアイデアや新技術で「この手があったか!」という解決方法を期待していますと語りました。

株式会社 小学館集英社プロダクション様

学びの機会に新しい価値を生み出し、業界全体を盛り上げるアイデア

イベントのイメージ

学びに楽しさをプラスし、エンタメに学びの要素を入れるエデュテイメントを理念とし、エンターテイメント事業と教育事業を展開する小学館集英社プロダクション様からは、教育保育サービスを提供している放課後施設を軸とした、小学生の放課後に新しい価値を生む企画の募集について説明がありました。
アイデアとしてお話頂いたものは、小学生に向けた面白くてタメになる学びコンテンツや学童保育サービスの収益改善化に関する提案、業界ネットワークの構築、放課後施設の空き時間の有効活用です。番外編として、小学館集英社プロダクション様の協業先が保有する移動型Web会議システムを活用した企画もご紹介いただきました。従来の発想にとらわれない、提案を歓迎しますと語りました。

【イベント概要】

テーマ
始動!事業共創を生み出すシーズ&ニーズ逆ピッチ

開催日時
2021年9月7日(火)13:00〜16:00

イベントパート開催場所
オンライン(YouTubeライブ配信)

本イベントはInnovation Base TokyoのYouTubeチャンネルでアーカイブ配信中です。
こちらでご覧ください。

※協業募集期間が終了している場合がございますので、ご容赦ください。